新年あけましておめでとうございます。
正月はみなさんゆっくりお過ごし出来たでしょうか?
今年から正月の緊急対応のため、2時間の診察時間を設けましたが、診察希望の患者さんが多くいらっしゃいました。
病気は待ってくれませんので、来年以降も緊急対応の為の診察を続けようと思っています。
今年もなつ動物病院をどうぞよろしくお願いします。

今回は去勢・避妊手術前の術前検査・健康診断の勧めです。
当院では若い子であっても去勢手術・避妊手術時等全身麻酔をかける際には基本的に血液検査・
レントゲン検査を実施させて頂いております。
理由は大きく3つあります。
①麻酔のリスク把握、お伝えのため
②健康時のデータ採取
③先天的病気の発見のため

です。

①について
全身麻酔を行う際は麻酔のリスクはどんなに若くて健康な子でも0%にはなりません。
病気や他疾患があると麻酔のリスクはより高くなります。
このため、避妊去勢手術であっても他の手術であっても術前に検査をすることでオーナーさんに
正確な麻酔のリスクをお伝えすることが出来ると考えています。
どんな手術であっても、手術は一大決心だと思います。
なので麻酔のリスクもふまえてご決断、ご理解頂きたいと考えています。

②について
去勢・避妊手術は比較的若齢で健康なときに行うことが多いです。
この若い時期に血液検査を行うことで、将来病気にかかってしまったとき、何が原因で
しんどくなったのかが比較で判断しやすくなる事もあります。
このため、健康時のデータを残しておくというのは重要です。

③について
一見健康に見えても実は病気を持っていることもあります。
早期に発見、診断することで完治に導ける先天的な病気もあります。
今回ご紹介する横隔膜ヘルニアであったり、門脈体循環シャントであったり、動脈管開存症で
あったりです。
発見が遅れれば完治が見込めなくなったり寿命が短くなってしまったり。
そういった病気を見逃さず、健康な時間を多く過ごして欲しいと願っています。

こういった事情から費用はかかりますが手術前の血液検査・レントゲン検査をお勧めしています。

前置きが長くなりました、今回は避妊手術前の検査で横隔膜ヘルニアが見つかった子のお話です。
下の方には手術中写真もありますので、苦手な方はそっと閉じて頂けたらと思います。
横隔膜は胸の中(胸腔)とお腹の中(腹腔)を隔てる筋肉の膜です。
横隔膜の助けにより肺が広がったり縮んだり、呼吸が出来ます。
この横隔膜に孔があき、腹腔内臓器が胸腔に入り込んだ状態を横隔膜ヘルニアと呼びます。
横隔膜ヘルニアは生まれつきの孔による先天性横隔膜ヘルニアと、
事故などにより腹部に圧が加わって横隔膜に孔がある後天性横隔膜ヘルニアに大別出来ます。

今回は避妊手術希望で来られたメインクーンのネコちゃん、全く無症状の子ですが、
レントゲン検査をすると
手術前手術後

手術前
手術後

手術後のレントゲンと比較して手術前のレントゲンでは肝臓より頭側、心臓と横隔膜の間で
出っ張りを認めます。
これが横隔膜ヘルニアで、エコー検査で脱出しているのは肝臓ということが分かりました。

今は無症状でも今後腹腔内の他の臓器が脱出したり、胸腔内の心臓や肺を圧迫したり癒着したり、
現在脱出している肝臓が捻転したり、こういった急変のリスクもありますので今回手術をさせて頂きました。

お腹を開けると

肝臓が胸腔に向かって変形、陥入しています。

ゆっくり肝臓をひっぱり、整復すると

横隔膜の孔が確認出来ました。

孔も比較的小さかったので、糸で縫って整復、手術終了です。
現在も特に症状無く、早期発見でしんどくなることなく治療が出来た子でした。

一見健康に見えてもリスクが隠れていることもあります。
リスクを抱えているだけで健康な子もいます。
なつ動物病院では症状が出てからの処置ではなく、症状が出る前の予防的処置をお勧めさせて頂きます。

ご相談ごとがありましたらお気軽にお問い合わせください。