今回は腹腔鏡について、2回目です。
前回、県内で通常、飼い主さんが腹腔鏡手術を希望した場合、おそらく当院がお近くの動物病院になります
(県東部にお住まいの方は広島県の方がお近くかもしれません。)、という事をお話ししました。
では、どういった場合に腹腔鏡手術が出来るのか、今回はこのことについてお話ししていきます。

まず、腹腔鏡のメリットデメリットですが、当院HPこちらの欄に記載しています。
https://natsu-ah.com/laparoscopic-surgery/#link01
まぁざっくり言うと、

メリット
・傷が小さく、動物の負担、飼い主さんの精神的負担(傷が大きくてかわいそう)が少なくなる
・小さい傷でも拡大視野で目視しながら安全に実施が出来る
・手術の内容(乳び胸、膀胱結石、副腎腫瘍など)によっては治癒率が高いまたはアプローチしやすい


デメリット
・手術時間が長くなりやすい
・適応症例が限られる、場合により腹腔鏡から開腹に移行することがある
・特殊な器械を使うため開腹より高額になりやすい

といったことが挙げられます。

また、腹腔鏡を用いて腹腔内で操作が終わるものを腹腔鏡下〜と呼びます。
臓器などを一度腹腔外に出して手技を行うものを腹腔鏡補助下〜と呼びます。

では犬猫において実際に想定される手術一覧を挙げていきます。
腹腔鏡下(胸腔鏡下)
・卵巣摘出術(避妊手術)
・潜在精巣摘出術(去勢手術)
・(予防的)胃固定術
・肝生検(その他生検)

・脾臓摘出術
・副腎腫瘍摘出術
・胆嚢摘出術
・胸管結紮術(乳び胸の手術)
・心膜切除術(乳び胸・その他の手術)
・乳び槽切開術(乳び胸の手術)


腹腔鏡補助下
・卵巣子宮摘出術(避妊手術・子宮蓄膿症)
・浅在精巣摘出術(去勢手術)
・膀胱結石摘出術
・腸切開術・腸生検
・門脈体循環短絡血管結紮術
・脾臓摘出術

・尿管結石摘出術

といった手術が挙げられます。
人医療ではより多くの手術適応がありますが、体が小さな犬、猫においては上記あたりの手術が適応となります。
腹腔鏡手術は開腹手術と異なる技術が必要であり、視野、腹腔内操作に限りがあるためどうしても手術は一般的に開腹よりも時間が長くなりやすいです。
ただ、開腹手術よりも明らかに術後の予後が良い(治療成績が良い)、開腹よりもアプローチしやすいと考えられている手術もあり、症例に応じてより動物にとって負担が少ない方法を選択していくことが重要と考えます。

また、腹腔鏡のデメリットとして、特殊な機械が必要、特殊な技術が必要です。
当院ではこのデメリットに対し、
・当院で必要な環境を準備しておく(腹腔鏡を準備しておく)
・当院で完結できない難易度の手術は腹腔鏡専任の先生をお呼びして執刀していただく
こうすることで、患者さんが腹腔鏡手術を行える機会を身近にしつつ遠くの病院へ行く負担を減らしていきたいと考えています。

腹腔鏡の総論のお話はここまでです。
次回からは各手術のお話をしていきますね。