猫の一時気管切開と永久気管切開:気管入口の腫瘤
こんにちは、なつ動物病院です。
山口は下関は台風で大雨でしたが、皆さんのお住まいの地域はいかがでしたでしょうか?
梅雨もようやく明けましたね、
久しぶりの更新ですが、今回は病気についてです。
後半は手術部位の写真もありますので、苦手な方はスルーしてください。
今回の主役は猫ちゃんです。
凛々しい顔つきの白猫ちゃんですね。
初めて来院されたときの症状はご飯を食べない、声がかれている、でした。
呼吸状態に異常はなく、血液検査、お腹のレントゲン検査で腸にガスが貯まっていました。
胃腸の病気と考え、点滴治療で食欲も声のかすれも一時改善したのですが、再度食欲不振に。
再診時、診てみると息を吸いにくい様子(吸気性呼吸困難)がありました。
ここで喉から胸にかけてのレントゲン検査をしてみると、
気管の入り口あたりに出来物(腫瘤)を認めました。
出来物が気管の入り口につまり(閉塞)、呼吸がしにくいことから空気を飲み込み(呑気)、その影響で食欲不振が出ていることが予想されました。
このままでは息が出来なくなるので、空気の流れを確保する処置を実施する事にしました。
腫瘤を確認するにしても取るにしても、まずは空気の流れを確保する必要があります。
今回のような場合、その方法として、
・一時気管切開
・永久気管切開
という方法があります。
・一時気管切開
気管に一時的に空気の通り道の穴を開け、閉塞の原因がなくなれば閉じるというもの。
一時的に空気の通り道の穴を開けている間はチューブなどが必要。
・永久気管切開
気管に穴を開け、その穴を通じて呼吸をさせる方法。仮に閉塞の原因がなくなっても穴はあいたまま。
原因の解決が見込める場合は一時気管切開を、原因の解決が見込めない場合は永久気管切開を行うこととなります。
今回の子では一時気管切開を選択し、腫瘤の確認を行いました。
出来物を内視鏡で確認すると、気管の入り口をふさぐ形であり、切除は難しい、もしくは切除出来たとしても呼吸に影響を与えると判断しました。
一時気管切開のまま維持を試みましたが、猫ちゃんの場合、気管の分泌物が多く、チューブがすぐ詰まってしまうことが多いです。
今回も分泌物が多く、一時気管切開では呼吸の維持が出来ないと判断、すぐに永久気管切開に切り替えました。
今回の子は、その後、二次診療施設へご紹介し、精査、放射線治療を行っています。
放射線治療後の腫瘤はレントゲン上このようになりました。
今回のような病気は比較的珍しいですが、当院では生命維持に必要な事を出来る限り行い、その後、当院で対応出来ないより詳しい検査や治療が必要な動物は適した二次診療施設をご紹介させて頂いています。
気になることがございましたら遠慮無くご相談にいらしてください。