今回で腹腔鏡の3回目になります。
今回第3回からは腹腔鏡で出来る各手術についてのお話になります。
今回は腹腔鏡(補助)下避妊(不妊)手術についてお話しします。
まず、一般の1次診療施設にて一番出番が多いと思われるのが、避妊(不妊)手術です。
当院では従来の方法、開腹による避妊手術では卵巣も子宮も取り出す卵巣子宮摘出術を行っています。
この場合、猫で1.5〜2cm程度、犬で2cm〜5cm程度、体格が大きい犬だと10cm〜15cm程度お腹を開ける必要があります。
また卵巣を取り出す処置をする際、卵巣提索という骨盤に付着している靱帯をお腹の外へ強く引っ張る必要があります。
この靱帯を強く引っ張るときに強い痛みが発生すると考えられています。
では腹腔鏡を用いた場合どうするか、のお話の前に、腹腔鏡を用いた避妊(不妊)手術の分類を記載します。
腹腔鏡下卵巣摘出術(腹腔内のみで手技を完結する手術で、卵巣のみを取り出す)
腹腔鏡補助下卵巣子宮摘出術(腹腔鏡を用いつつ、卵巣・子宮を腹腔外に引っ張り、腹腔外で子宮を切除する手術)
以前お話ししたように腹腔鏡下なのか、腹腔鏡補助下なのかで意味合いが異なります。
卵巣のみ摘出するのか、卵巣も子宮も摘出するのか、については、健康寿命の延長の観点、病気の予防の観点からは同じと考えられています。
このため、当院では腹腔鏡を用いた避妊(不妊)手術では通常腹腔鏡下卵巣摘出術を実施します。
メリットとして
・小さい傷で痛みが少ない腹腔鏡のメリットを最大限活かせる
・手術時間がより短くなる
為です。
卵巣よりも子宮の方が大きい為、卵巣だけではなく子宮も取り出そうとするとより大きくお腹を切る必要が出てきます。
もちろん患者さんにより必要と判断すれば子宮も一緒に取り出しますが、上記理由により若くて健康な子であればより腹腔鏡のメリットを活かせると考える腹腔鏡下卵巣摘出術を実施します。
では開腹と比較した場合の腹腔鏡での避妊(不妊)手術のメリットはと言うと、
・より小さい小さい傷で手術を完結できる(審美的観点、疼痛緩和の観点)
・卵巣提索を強く引っ張らないため痛みが少ないと考えられる(疼痛緩和の観点)
・腹腔内を拡大視野で確認しながら手術が出来るため、小さい傷ながらより安全に実施出来る(安全性の観点)
といった点です。
また、腹腔鏡では鉗子やカメラを出し入れする穴をポートと呼びますが、腹腔鏡を用いた避妊(不妊)手術は通常3ポートを使用することが多いです。
当院では2ポートでの手術を行う事が多く、より小さな傷や痛みの少なさを目指しています。
(必要に応じて3ポートや開腹に切り替えます。)
ご興味がありましたらお気軽にご相談ください。
卵巣動静脈を止血・切離
子宮角を止血・切離
卵巣提索を切離
強く引っ張る必要が無い